ペットボトルの上でカツラ作り──北朝鮮「刑務所強制経済」の現場
デコボコのセメント床にビニールシートや麻袋を敷き、作業台もないまま、大きなペットボトルにカツラを乗せて作業が行われている。ひび割れた壁、洗面器代わりのひさごに詰め込まれた人工毛髪――。 デイリーNKが入手した北朝鮮の拘禁施設でのカツラ製造現場の写真には、受刑者が劣悪な環境で強制労働させられている実態が凝縮されている。 平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋によると、中国との国境に接する龍川(リョンチョン)や塩州(ヨムジュ)にある労働鍛錬隊(刑期の短い刑法犯、行政違反者を収監する ...
「犬死は嫌だ」北朝鮮、ロシア派兵”自爆美化”に軍内で反発
北朝鮮当局が、ロシアの対ウクライナ侵攻に派遣した朝鮮人民軍(北朝鮮軍)特殊部隊の戦闘事例を英雄的に美化し、国内向けのプロパガンダに乗り出したことが明らかになった。 派遣部隊の実際の戦闘の内容を公開し、派兵の正当性を宣伝すると同時に軍の士気を鼓舞しようとしているという見方が出ている。韓国のサンド研究所が運営するサンドタイムズが報じた。 北朝鮮事情に詳しい情報筋によると、咸鏡北道(ハムギョンブクト)に駐屯する朝鮮人民軍第9軍団の政治部は今月12日、全軍団の兵士を対象に講演会を開い ...
「ウ○コでも漏らしたのか」北朝鮮の若者、金正恩を過激に批判
金正恩総書記について、北朝鮮の若者たちの間で辛辣な批判が飛び交っていると、韓国のサンド研究所が運営するサンドタイムズが報じている。 複数の北朝鮮内部の情報筋がサンドタイムズに明かしたところによれば、若者の間では体のラインがはっきり現れる「スキニージーンズ」が流行している。放埓(ほうらつ)な体型の金正恩氏には着こなせないものだろう。このような見た目に対する意識の変化が、指導者へのイメージ批判にもつながっているという。 平安北道の情報筋は「最近、新聞やテレビでプーチンと元帥様(金 ...
北朝鮮”国家的盗聴”の実態「固定電話の受話器に怪しい装置」
北朝鮮の首都・平壌市内の高級ホテルの客室には、盗聴装置が仕掛けられていると言われるが、どこに仕掛けてあるかもわからず、実物を発見したという報告は未だにないようだ。 だが、北朝鮮北部、恵山(ヘサン)からはこんな情報が寄せられた。 「国産の固定電話の受話器から異様な(盗聴)装置が発見された」 それはどのようなものだったのか。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。 両江道(リャンガンド)の住民筋(匿名希望)によると、現地では家庭用固定電話に盗聴装置が隠されていることが ...
「ロシア密着」中国に嫌われ飢える北朝鮮…コメ輸入急減で価格暴騰
昨年12月以降、やや安定的に維持されてきた北朝鮮市場の穀物価格が最近上昇傾向に転じ、歴代最高値を記録した。 北朝鮮国民の負担がいっそう高まるものとみられる。 デイリーNKが定期的に実施する北朝鮮市場の物価調査によると、3月30日基準で両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)市のある市場で、コメ1キロが9700北朝鮮ウォンで取り引きされ、2週間で15.9パーセントも急騰した。 デイリーNKが北朝鮮市場の物価調査を始めた2009年以来、最も高い価格だ。 (参考記事:北朝鮮国民も泣き崩 ...
処刑台に送られた北朝鮮女性10人…命をかけた暴動事件の顛末
中国・遼寧省に派遣されていた北朝鮮労働者の相当数が、最近になって帰国したのは本欄でも既報のとおりだ。 デイリーNKの現地情報筋によれば、昨年下半期から先月末にかけて、遼寧省で働いていた北朝鮮の女性労働者たちが段階的に帰国しており、それに伴って彼女らを雇用していた中国企業では操業を停止したり、他地域へ移転したりする事例が相次いでいるという。 派遣労働者の賃金から徴収する上納金は、北朝鮮にとって貴重な外貨収入源だ。それを放棄してまで労働者を引き揚げさせる理由は何か。 (参考記事: ...
「北朝鮮の国民感情を掌握せよ」中国が仕掛ける文化浸透と洗脳工作
韓国の北朝鮮向けラジオ局「国民統一放送」が昨年、北朝鮮住民100人を対象に実施した「2024年北朝鮮メディア環境と住民の外部コンテンツ利用実態調査」で、「コンテンツの出所となる国はどこか」という問いに対し、88.4%が「中国」と回答した。 北朝鮮では、韓国や中国から国境を越えてテレビやラジオの電波が届くため、受信はさほど難しくない。北朝鮮当局は韓流の取り締まりには血道を上げている一方、友好国である中国の文化浸透に対する警戒感は相対的に低い。 (参考記事:「見てはいけない」ボロ ...
「自分の専用機」にも怖くて乗れない…金正恩がモスクワに行かなかった理由
モスクワで今月9日、対独戦勝80周年記念式典が開催され、中国の習近平国家主席をはじめ、ロシアに近い約25カ国の首脳が参集した。クルスク州でのウクライナ軍との戦闘に派兵した北朝鮮の金正恩総書記が参加するか注目されたが、結局、見送られた。 金正恩氏はこれまでにもロシア・極東を訪れてプーチン大統領と会談しているが、モスクワを訪問したことはなく、また多数の国家元首と席を共にしたこともない。クルスクでの戦いについてロシアとともに勝利宣言した直後だけに、首脳外交でのデビューを飾るなら絶好 ...
「豚舎で襲われる女性兵士」北朝鮮軍”性暴力”の生々しい現場
朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の女性兵士に対する性暴力被害の深刻さが明らかになった。証言によれば、北朝鮮において女性兵士は性暴力を受けても訴える場所がなく、むしろ加害者の顔色をうかがわなければならないという非人道的な状況に置かれている。 韓国の統一研究院がこのほど発表した報告書『北朝鮮住民の軍隊生活』では、朝鮮人民軍で中隊長を務めていた脱北女性のA氏が、軍内の性暴力問題について証言している。 A氏は、「女性の意思ではなく、男性が自らの権力を用いて行うことである」「北朝鮮軍では上官に呼 ...
「釜の中は空っぽなのに」北朝鮮農民、当局のノルマ強要に反発
「ポリッコゲ」ーーー朝鮮語で「麦の峠」を意味する。前年の収穫の蓄えが底をつき、初夏の麦の収穫まで飢えに苦しむ「春窮」のことを指す。 そんな状況に必死に堪えている北朝鮮の農民たちは、「生産ノルマを達成しろ」と迫る農場幹部にうんざりしている。咸鏡南道(ハムギョンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。 現在、金野(クミャ)郡のある農場では、所属する農民の半数以上が1日1食にもまともにありつけていない。いわゆる「絶糧世帯」にほぼ近い状態だろう。 (参考記事:北朝鮮「国民の半分が飢 ...
「感謝する理由ない」北朝鮮の児童が金正恩称賛に反発…教師も両親も驚愕
毎年のように深刻な自然災害に襲われる北朝鮮では、昨年7月、中国との国境を流れる鴨緑江が大雨で氾濫した。この氾濫により、北朝鮮の公式発表でも死者は1500人、家を失った者は1万5000人に達した。実際の死者や被災者の数はこれをはるかに上回ると見られている。 鴨緑江から遠く離れた平安南道(ピョンアンナムド)安州(アンジュ)では被害の有無は不明であるが、市内の小学校では、災害復興に尽力した金正恩総書記の「偉大さ」を讃える教育が行われている。しかし、子どもたちの反応は意外なものであっ ...
「もう勘弁してほしい」金正恩の開発計画で市民ら苦痛
北朝鮮の首都・平壌では、市内東部に位置する大城(テソン)区域と三石(サムソク)区域を結ぶ新たな大通りの建設が始まるとの情報が飛び交っている。これに対し、一部の住民からは懸念の声が上がっている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。 平壌の情報筋によれば、金正恩総書記が主導し2021年から推進されてきた「毎年1万世帯ずつ5年間で5万世帯の住宅を平壌に建設する」という大規模プロジェクトは、本来であれば今年で完了するはずであった。しかし、なおも工事が継続するとの噂が広 ...
「党は腐敗している」北朝鮮で噴き出した民の声…不正告発が急増
北朝鮮で「信訴」とは、中国の「信訪」と同様に、理不尽な目に遭った国民が、そのことを政府機関に直訴するシステムで、一種の「目安箱」のようなものだ。民主主義や言論の自由のない北朝鮮で、庶民がお上に何かを申し立てることのできるほぼ唯一の仕組みだ。 現在、平安南道(ピョンアンナムド)では幹部による不正行為に対する「信訴」が急増しており、当局は慌ただしく対応に乗り出している。韓国のサンド研究所が運営するサンドタイムズがこの状況を報じた。 (参考記事:北朝鮮社会が震撼「医大の性奴隷」事件 ...
「ドリアン大好き」北朝鮮の姫様…飢える庶民を尻目に大量輸入
北朝鮮で最も一般的な果物といえば、りんごである。韓国の統計庁によれば、北朝鮮における2022年のりんご生産量は80万1533トンで、その多くが黄海北道(ファンヘブクト)のクァイル郡を中心に栽培されている。「クァイル」は朝鮮語で果物を意味し、郡の面積の7割を果樹園が占める。 りんごに加え、みかん、もも、ぶどう、梨、柿を合わせて「6大果物」と呼ばれ、これらが果物生産量の91%を占めている。 しかし、一般庶民はこれらの果物を口にするどころか、目にする機会すらほとんどない。その大部分 ...
「中国離れ」「ロシア接近」の代償 北朝鮮経済が直面する崩壊リスク
北朝鮮の非公式経済(市場経済)の要衝と言えば、北東部の清津(チョンジン)と首都・平壌郊外の平城(ピョンソン)である。前者は全国最大と言われる巨大市場を擁し、後者は国内外から集まった物資を大消費地の平壌や全国各地に送り出す機能を果たしている。 平城市場に次ぐ規模を誇る玉田(オクチョン)市場は、独特の流通ネットワークを形成していることで知られるが、韓国のサンドタイムズによると、この機能が今年3月初旬から麻痺状態に陥っているという。 北朝鮮全域の価格基準を定めてきたこの市場の機能停 ...
「他国の戦争で死ななければならないのか」ロシア派兵で北朝鮮国民から不満
北朝鮮当局がロシア派兵と犠牲者の発生を公表したことを受け、国民の間に衝撃が広がっている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は先月29日、「他国の戦場に送られて死んだ軍人はどれほど無念で、その親たちはまたどれほど心が痛むか心配する人もいた」という現地住民の話を伝えているが、ほかにも様々な反応が出ている。 RFAによると、前出とは別の住民は「ロシアの戦争にわが国の軍人が派遣されたという内容が報道されると、皆が落ち着かない雰囲気になった」と話している。 (参考記事:「恐怖に ...