金正恩に7億円を送ったオンラインカジノ業者…日本マネーは大丈夫か
6月、フジテレビの元制作部企画担当部長が、違法オンラインカジノを利用した常習賭博の疑いで警視庁に逮捕された。報道によれば、2024年からの約1年間で約1億円を入金し、総額1億7000万円にのぼる賭博を繰り返していたという。
オンラインカジノの実態には不明な部分が多いが、少なくともその一部は、北朝鮮のサイバー部隊とのつながりが確認されている。
一説に、日本語対応のオンラインカジノのうち、フィリピンやカンボジアを拠点に運営されているものの中には、中国系マフィアや韓国系暴力団などの国際犯罪組織が深く関与しているケースがある。それらはサーバー運営やカスタマーサポート、資金回収業務までを広域で分業化。表向きは「娯楽」として構築されたシステムの裏側に、違法賭博とマネーロンダリングの温床が広がっているのだ。
そして近年、これらのサイトのインフラや技術支援に、北朝鮮のIT技術者が関与している実態が徐々に明らかになってきた。
韓国・ソウル中央地検6月26日、北朝鮮の軍需工業部傘下「313総局」所属のハッカーらと共謀し、違法賭博サイトを制作・販売していた韓国人男性(55)を国家保安法違反などで起訴したと発表した。男性はサイトを販売するなどして得た収益の一部、少なくとも70億ウォン(約7億2900万円)を北朝鮮側に伝達したことが確認されている。
こうした北朝鮮人IT要員の動きは、以前からカンボジアでも確認されている。2020年1月、観光ビザで入国していた北朝鮮人プログラマー16人が、中国系のオンラインカジノ運営企業で不法就労していたとして、シェムリアップで逮捕・国外追放された。
これにより、北朝鮮が物理的に人材を現地へ送り込み、直接カジノの構築・運営に関与していた証拠が明らかになった。彼らの活動はすべて、国家の指示の下にあり、得られた報酬の大半が体制維持や核・ミサイルなどの開発予算に転用されていると見られている。
警察庁の推計によれば、日本国内のオンラインカジノ利用者は200万人近いとされ、賭け金は1兆円を超えると見られている。その資金の一部が、北朝鮮に送られている可能性は否定できない。
東京などの高級クラブでは、外国人のオンラインカジノの「元締め」たちが豪遊しているという情報もある。彼らの中にも、北朝鮮のサイバー部隊と接点を持つ者がいるかもしれない。
(参考記事:「暴力団と手を組んだ」北朝鮮のIT組織。東京の高級クラブで飲み歩く「新たな顔ぶれ」の正体は…)
オンラインカジノはもはや単なる「個人の逸脱」の域を超えて、国家ぐるみの外貨獲得やサイバー戦略の一部として機能している面もある。そうした現実を看過すれば、日本人の金銭が、北朝鮮の核・ミサイル開発に間接的に加担することもあり得るのだ。