「英雄」の代償は不安と沈黙──北朝鮮派兵家族の知られざる苦悩

北朝鮮は昨年、1万人以上の兵士をロシアに派遣し、「祖国のための英雄的闘い」として美化してきた。国は「忠誠を尽くせば報酬がある」とするが、実際に家族が受け取った恩恵はほとんどない。

デイリーNKの取材に応じた平安北道のAさん、咸鏡南道のBさんは、それぞれ派遣兵士の家族として不安と疑念を語った。

「国はまだ正式に(報奨について)何も言っておらず、新しい家、平壌市居住(の権利)、名節物資の配給、労働党への入党推薦、生きても死んでも英雄称号の授与といった噂ばかりが飛び交っている。実際にはまだ何も受け取っていない」(Aさん)

「中国製の食用油やトウモロコシなどの物資を一度受け取ったが、部隊の幹部の家には6ヶ月間ずっと大量の食糧が供給されていた」(Bさん)

「表向きは気にしていないふりをしても、内心では血の涙を流している。その代償として得たものはとても喉を通らない」

派遣を「留学訓練」と信じて送り出したAさんは、誇らしさと同時に騙されたのではという悔しさも抱いている。

「自分の子が祖国のために血を流すのは親として誇りだ」としながらも、「留学訓練だと言われて行ったのであって、本当に戦争だとわかっていたら行かなかったはずだ。騙されたのではないかという思いがあり、悔しい」

息子の安否すら不明の中で、誇りと不安が入り混じる日々。

「軍務中、一度も顔を見ることができなかった。戦死していたとしたら、私たちはどう生きていけばいいのか」(Bさん)

「(息子が)祖国に帰還したのか、死んだのか、怪我をしているのか何もわからない。国が派兵を認めてからは、うわさばかりが広まり、頭がおかしくなりそうだ」

名誉を語る影で、真実はいまだ見えない。北朝鮮の「英雄」政策は、家族に苦悩と混乱をもたらしている。